オーギー・レンとは無関係のクリスマスストーリー

「ねえママ。ヨシオくんちはWiiで、ユキコちゃんちはPSPなんだって! ぼくもWiiほしいなぁ」
「ダメよ。よそはよそ、うちはうち。大体プレゼントはサンタに頼むもんでしょ」
「うちにサンタきたことないじゃん! それにいまどきサンタなんてしんじてる子、いないよ! だれだってオヤがプレゼントかってくるってしってるもん!」
「こら! ママの言うことを聞け! それに子供がそんな夢のないこと言ってはいかん!」
「なんだよパパもママも! つごうのいいことばっかり! こんなんなら、ヨシオくんちのこにうまれればよかったっ」
バシィっ。
顔を真っ赤にしたパパが僕の頬を叩いていた。
「おまえはわしとママの子だ。ヨシオくんのパパとママの子じゃない!」
僕は泣きながら玄関を飛び出す。あちこち街をさまよったけど行くあてもなく、家のそばに戻る。塀の外から覗き込む。リビングの明かりが消えたのを見計らって、庭に入った。その日はポチを抱きしめながら、あいつの小屋で一緒に眠ったのを覚えてる。






あれから何年たっただろう。
今じゃ父さんも母さんも喧嘩ばかりしてる。
「いっつも仕事仕事って、あの子のことがかわいそうじゃないんですか!」
「しかたないだろ! 仕事なんだから!」
「こんなことなら結婚なんてするんじゃなかった!」
「こっちこそ!」
「恋人があなただなんて素敵と思った私がバカでしたわ!」
「まったくだ!」
「……出て行きます!」
母さんが荷物をまとめて出て行く。僕に声もかけずに。僕のことがかわいそうなんていうのも結局口実なんだろう。
……今度こそ母さん帰ってこないんじゃないかな。



机の引き出しから便箋を取り出す。あて先なんかわからないけど、ただ文字を、願いをかきつける。
《サンタさんへ。喧嘩しない父さんと母さんが欲しいです》
便箋に涙が落ちる。にじんだ文字を見て、また涙が出てくる。と、突然背後のドアが開く。仕事着のままの父さんが立っていた。
「それは無理な相談だ。母さんがわしの仕事がいやで出て行ったのだとしてもわしはこの仕事をやめられん。サンタにもかなえられん願いはある」
そういうと袋を足元に下ろし、赤い衣装を僕に投げつける。
ニートは終いだ。おまえも今日から手伝え。……サンタに普通の生活が送れるなどと思うなよ」
父さんの背後には、いつのまにかポチが立っていた。
トナカイ特有のいやな笑いを浮かべて。