習作

「君は神を信じるかね?」「私に都合のいい神ならば」

「しかしなんで宇宙の彼方からわざわざ地球を侵略しにくるんです?」 「侵略じゃない。殲滅だ」 「?」 「君は神を信じるかね?」 「私に都合のいい神ならば」 「いい教義だ。だがまさにその逆、我らが神は我々にとって《都合の悪い神》そのものなのだよ」 …

巫女みこナッシン

「あ、おにいちゃーん!」 巫女姿の妹が走りよってくる。 まったくこいつはあきれるほどにかわいいな。そんなにかわいいとお兄ちゃんは困っちゃうのである。 なんて言ってるまにまに妹は最後の3mをえいっとばかりにジャンプ。 満面の笑みをうかべ、わーいと…

都庁一閃

轟音とともに、ビルが崩れる。もうもうたる土煙が周囲のビルを飲み込む中、その豪煙からふたつの影が細く煙の尾を引いて宙に飛び出す。 「センパイちょっと待ってください。自分が何斬ったかわかってます?」 「都庁でしょ?」 「そうです都庁ですっ! 都庁…

セイブ・ザ・エンペラー

その少女は制服姿のまま、ベッドを覗き込んでいた。ベッドの中には赤ちゃん。彼女の弟だろうか? その細く白い人差し指を伸ばして赤ちゃんに握らせている。あは。 やさしく微笑みかけていた彼女が、急に険しい顔になるや、つぎの瞬間、宙を反転していた。今…

砂糖菓子の弾丸

砂糖菓子をほおばりながら男が口をひらく。 右手は樹上のアメーバ体を指差していた。 「見ろ。こいつらは動物でもあり植物でもある。そしてそれ以上におもしろいのはこいつらの網目状の構造だ。おれはこれを見たことがある」 「どこで?」 もうひとりの男が…

萌理賞 - ミミナシ・イチホ (490文字)

彼女には耳がなかった。 放課後の屋上。いつものようにおれがマンガを読んでいると、突然目の前の床が光を放ち始めた。周囲の空気がチリチリと音を立てる。わずか数秒の出来事だったと思う。光がおさまったとき、そこに彼女がいた。 腰まで伸びた黒髪、知ら…