おれたちはいつか夢のバウムクーヘンに出会えると──信じている。

バウムクーヘンを一層一層はがしながら食べるのが人生最大の悦びであるとおれに知られるところのおれです。えっへん。
そんで幼いころからのおれの夢に、バウムクーヘンを外側からずーっと慎重にはがしてって一枚の薄いクーヘンにしてペロリと食べてやるっていうのがあったのですけど、バウム上の構造的問題が発覚した! バウムクーヘンの層は外と中でつながってないんだって! うそだろ? おれの脳内にあるバウムクーヘン像はロールケーキを薄くした構造をしてたのに! なのにつながってないだなんて。そんなのおれの知ってるバウムクーヘンじゃない。ただのバウムだよ……。
だがあきらめるのはまだ早い。要するにバウムクーヘンマシーンの構造上の問題なのだ。ぐるぐるまわりながら焼くのではなく、立ち止まりながら焼けば理論上は可能なはず。たゆまぬ努力をつづければいつか一層式バウムクーヘンを作り上げることだってできる。おれはそう信じてる。包丁人味平の一本麺だって一朝一夕にはできなかったのである。