「おまえ今度のフネにママの名前つけたんだって？」

堯の時代、空には十の太陽があり地上は灼熱の地獄であった。
そこで英雄 羿(げい)は九つの太陽を弓で射ち落とし、地上は平穏を取り戻した。
羿 - wikipedia

「おまえ今度のフネにママの名前つけたんだって？」
「みんなそう言うのな。違うよ。昔話からとったんだ」
「どんな？」
「10個の太陽のうち、９つの余計な太陽を討ち落とした英雄の話」
「なにそれ？ じゃあその余計な太陽がジャパンてこと？」
「あそこはヒノモトノクニとも言うしな」
「で、おまえは英雄気取りか」
そんなんじゃねぇよ、そんなんじゃ…。そう口を開きかけたとき、ちょうどペインターが振り向いて叫ぶ。
「描けたぜ？ これでいいかい？」
エノラ・ゲイ。
銀色のノーズに描かれたその文字は、どこか滲んで見えた。