ビッグベン・スタンピード

薄壁一枚挟んだ向こうに、自分と同じ目的を持つ同志がいる。顔を見ることもなく、これからの人生で今をおいて二度とすれ違うこともないだろう存在。
だがあたたかい。姿の見えない互いの存在に感じる、このあたたかさは何? そうだ。夜の街のあかりひとつひとつに人の息遣いを感じたり、モニタのテキストの向こうに人のぬくもりを感じるあの感覚に似たものだ。
あるいはカイジの橋にも似た。互いに手をとって支えあうこともできない関係の中、みなそれぞれがゴールに向けて産みの苦しみを味わう。一瞬の爆発。刹那のきらめき。待機せしものたちは成功者に惜しみない賞賛を浴びせる。俗世に蔓延する成功者へのねたみ、そねみなどこの場には露ほどもない。
家ではなく。おれたちが公衆トイレで大をするの好きなのには、そういったワケがあるんだ。