あのころのおれたちはボンボンやコロコロで受けそうなプリミティブなギャグばっかり考えてた。
おれがキミと付き合ってたのはたぶん20歳のころだと思う。あのころは仲間内で子供に受けるギャグ研究なんてことばっかりやってた。なかでも一番気合入れてたギャグが
なんていうホントどうでもいいギャグで、実際いま文章で読んでもお寒いものだけれども、あのころのおれたちはコイツはイケるんじゃないか?なんていいながら調布の飲み屋の奥まった部屋に陣取り、ロンリコ151をベースにしたXYZをがぶがぶ飲み飲み「トップレス」「アンダレス」「トップレス」「アンダレス」を繰り返していた。
人間不思議なもので同じギャグを100回くらいやってるとなんだかだんだん面白くなってくる。これマジで子供ウケするんじゃね?コロコロデビューじゃね?なんてキラキラ本気の目させながらグラスとギャグを交互にあおり、最後の一杯を手にしようとしたときキミが怒る。
イイカゲンにしなさい!飲みすぎよ!
おれの手からもぎ取ったグラスを一気に飲み干し、ぶったおれるキミ。酒飲まないのに無茶するから、なんて心配したのを最後にその後の記憶はまったくなく、まぶしさに目をすがめて目をあけると、見知らぬ植え込みの中にいるおれ。上半身裸でうわヤベ、トップレスギャグやりすぎてマジトップレスったか?じゃあもしや下も…なんて思いながら、おそるおそる下半身に目をやるとアンダレスではなかった。
もしあのときキミが最後の一杯をおれの手から奪ってなかったら、たぶんリアルにトップレスアンドアンダレス。今頃おれは塀の中だったかもしれない。今の権威ある地位についていなかったかもしれない。
キミのおかげだ。ホント感謝してもしきれない。
あれ以来ものごとにはTPOがあることを知った。何事も場をわきまえるようになった。今では服の脱ぎ際は心得たものだ。風呂に入るときとトイレに行くとき。もっぱらおしっこはぜんぶ脱ぐようにしてる。