メガネ流裏千家 / 告知その二

日本舞踊がもともと暗殺術であったことは広く知られるところである。
今から800年前、謀略により武器である扇子を奪われた日本舞踊家が間者に襲われたおり、とっさにかけていたメガネを扇子に見立て、敵を葬ったのがその始まりである。
(メガネ流裏千家〜初の書 第一章二節より)

「絶技!オーバル!」
「妙技!!スクエア!!」
「秘術!!!ロイド!!!」
二人の男がメガネに手をかけた刹那、周囲をとりまく迷彩服の男たちがふきとぶ。ここはメガネ流裏千家 宗家の館。
「センパイ!数が多すぎます!!いったいなんだって米軍特殊部隊が我が道場を襲うのです?」
「自分たちの国が脅かされる力の存在は許せない、そういう考え方なんだろ?今度の大統領は」
「にしても、師範の留守中では防ぎきれませんよ!!」
「大丈夫。・・・ウワサをすればだ。ほら、お戻りになられた。・・師範!!邸内に五百、邸の周囲に約四千ほどの不貞の輩にございます!!」
師範と呼ばれた男が二人に微笑みかけ、そして銃を構えた特殊部隊に向ってゆっくり歩いて行く。
「センパイ。師範でもあれだけの銃の前じゃ。お手伝いしたほうが・・」
「師範なら大丈夫だ。黙ってみていなさい」
銃を持った男らの前でやおら座し、そしてメガネをはずしてフレームをそっとたたむと膝前方にゆっくりと置く。
「か、開始の構え?!銃を持った奴らに礼儀など不要ですっ!」
「あれは開始の構えではない。師範の奥義だ」
「あれが技?!なんという名前なのです?」
「名はない」
「我が流派の技はすべて、メガネのフレーム名から取っているはずです!・・違うのですか?」
「師範の技はフレームなどには・・・枠組みなどにはおさまらない。ゆえに名を持たない。だが、強いて名づけるならばアレは・・・結界だ」
「結界?!」
「ヒトは何のためにメガネをかけると思う?」
「それは眼が悪くなったからでは?」
「平たくいえばそうだ。メガネをかけることそれすなわち視力を取り戻し世界に相対するという意思表明。逆に言うと」
「はい」
「メガネがメガネをはずすとき。それは世界を拒絶するという意思だ。・・・師範が膝前に置いたあのメガネから師範を取り巻く1m弱の結界を何者をも侵すことはできない。師範の結界は・・・弾丸をも拒絶する」
「shoot!!」ダダダダダダッ!兵士たちが銃を斉射していたのはわずか1秒ほどだった。部屋を覆った紫煙が晴れる。正座した男の周囲には500人以上の兵士たちがピクリともせずに横たわっていた。
師範と呼ばれる男がメガネに手をのばし、そしてそれがあるべき場所におさまる。
「・・・すごい・・」
「師範のメガネが無敵と言われるゆえんさ。あのひとがメガネをかけ世界と向き合うとき、あのひとの視界に敵は生存しえない」
 * * *
ここで告知。
メガネナイト vol.2