ぼくらのデラウェア戦争

デラウェアといえば庶民の食べるぶどうナンバーワンだと思うのだけれど、そこはやはり庶民のたべものの宿命というべきか、おれんちローカルルールがためか、天がそう定めたからか、あるいはそのすべてがゆえに我が家の食卓には6人の家族に対して三房しかでてこなかった。
当然卓上は戦場となった。
あるものはとにかく口に放り込んでからまとめて皮を出し、またあるものは口の前方5cmで実を口内に投下・次弾装填までのストロークを稼ぐ。そんななかおれが編み出したのが一度に5粒の実をつかむ技だった。
親指を支点に残る4本の指で弧をつくり、同時にデラウェアの実をつまむ。口の直前で指に力をこめ、5粒の実をエントリー(口内発射)。返す指で血糊を払い、もとい、皮を捨て再度5粒のデラウェアをつかむ。ぶどうをたべるという行為の効率を極限まで高めたのがこの技だ。
今でもデラウェア大のおおきさのものなら片手で5つ程度はつまむことができるおれなのだけれど、いかんせん他には使い道のない能力なのである。