シリーズおれとプリキュア 増毛系ヒロインの死

プリキュア5に限らずだけれども、変身すると増毛するヒロインてのはようは命を削っているのだろう。増毛というのは、つまるところ急激な新陳代謝によって全身の肉体強化をしていることの、シンボル表現なわけである。10分もつはずのろうそくを、1分で燃やし尽くすことで強力な火力を得ている、その明示的表現としての増毛なのだ。
戦闘後、変身がとけた夢原らの足元には大量の抜け毛が残る。五色の髪の毛の山。
「ルージュはいいよね、その程度の抜けならあと50回は変身できるんじゃない?」
「ミントはしっぽがヤバイわ。あと10回でたぶんそこだけ生えてこない」
「ドリーム、レモネード、アクアはどっこいどっこいか」
「10回も変身したら、わたしたちの命も燃え尽きるのかしらね」
そしていつしか彼女らの毛根はその能力を使い果たす。代謝能力は限界を超え、肌には深いしわが刻まれる。もはや肉体を強制加速させることはできない。もうプリキュアになることはできないのだ。
夢原は禿げ上がった頭頂部をつるりとなで上げながら、思うだろう。
私はもうメタモルフォーゼできない体に変わってしまった。プリキュアに《成れない》夢原のぞみに《成ってしまった》。このことこそが最期のメタモルフォーゼなんだわ。でも悲しくなんかないよ。だって、私は常人の何百倍もの密度で人生を駆け抜けることができたんだもの。