萌えってそういうことだったのか会議 id:another篇

◆第一回 萌えってそういうことだったのか会議 はてなユーザー
・最低 800 字の日本語による萌えエピソードを添えてください。
http://q.hatena.ne.jp/1159223630

id:anotherについて議論するのはこれで何回目になる?」
「4万とんで59回目」
「いつもの結論にならないことを祈るよ」
「同感だね」
「じゃあ今日は僕から。id:anotherは別名を他人と名乗っている。文字通りの意味で、他人」
「うん。idに他人を掲げるということに意味はあるはず。例えば僕たちの想いは絶対にid:anotherには届かない。なぜならどこまでいっても他の人だからだ」
「拒絶の表明ということ? あのidは?」
「素直に読めば」
「でも拒絶のアピールは一つになりたいという想いの裏返しということは?」
「どちらの確率も50%」
「このアプローチは無意味ってことか」
「でも……他人っていうのは《わかりあえない》ことを前提にした言葉?」
「違う?」
「一人じゃなくて二人以上いるから、他人って属性が発生するってのはわかるけど」
「イコール《わかりあえない》じゃあないってことか」
「そうなるね」
「───バッドエンド。ネクストチャレンジ───」
「そもそもなんでid:anotherに?」
「例えば、他人になりたいという、羽化願望?」
「違うと思う。そんなシンプルな問題は克服してる」
「人がかかえる問題を忘れないようにするために、自分のidにしたというセンは?」
「人がかかえる問題?」
「自分の中には他人がいるという問題」
「例えば酒を飲んでいるときの自分?」
「例えば酒を飲んでいるときの自分(笑)」
「人は酒を飲むと自分のことを忘れる。これは酒を飲んでいる間の自分が自分でないことの、すなわち他人であることの証明だ」
「本当に?」
「さあね。ただそう思うことで自分の中に他人がいることを自覚していられる」
「それは何かコトをなすための行動のブレーキになってしまわない?」
「と同時に、自分を律する強固な後ろ盾にもなる」
「その自覚が自分の中の他人でない部分、つまり自分の中の自分を見つける助けになるの?」
「かもしれない」
「自分とは他人以外の存在って前提なんでしょ? だから自分の中の他人を自覚し」
「自分外の他人にも敏感になってゆく」
「すべての他人を規定しつくした最後の場所に、自分がいるといえる」
「だから他人と名乗る」
「自分が何者かという、人がかかえる問題を自覚しつづけるために」
「気がとおくなるような戦いに見えるけど?」
「結末が見えてたらおもしろくないじゃない?」
「───40059 ABEND」



「ちぇ、まーた同じ結論かぁ」
そういってモニタ上の議論ウィンドウを閉じてゆく。その一つ一つがid:another自身の自我構成エージェントに直結している。閉じられた70のウィンドウすべてがid:anotherの中にある多数の人格を代表しているといってもいい。
「これ以上、エージェント切り出すと僕自身にロールバックできなくなっちゃうんだけど」
現状の自分に戻れない、という意味の言葉をさらっと言ってのける。後頭部からのびる電極を外しながら、くるくるとマウスカーソルを回す。電子ポストイット上にカーソルがフォーカスする。人名をあらわすアルファベット。その前にはid:の表記。id:anotherの本当の名前を冠したidだった。
「……ま、しょうがないっか。やっぱ自分で決めたことだし。ほんとうの自分が抽出できてからじゃないと、本名のid名乗るの、なんかカッコワルイしね」
そのままマウスを動かし、自我境界線スレスレの人格分離設定ファイルをワークディレクトリから取り出す。議論エンジンにドラッグドロップ。
電極の束を再度脳にプラグし、小さく祈る。プラグアンドプレイ。
「さ、いくよ」
制服のスカートをひるがえしシートにつく彼女。40060 start。他人ではない自分を求め、彼女は最後の《他人の海》にダイブした。



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◆第一回 萌えってそういうことだったのか会議 はてなユーザー
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えーーーーっ! ちょ、ちょっと。