友人が「コンセントに髪の毛をつっこむと感電死する」といいはじめた。

中学生のころだろうか、友人が「コンセントに髪の毛をつっこむと感電死する」といいはじめた。髪を電気がつたって脳細胞を焼き尽くすという話で、人を疑うということを知らなかった私は震え上がったのだった。なんといっても、コンセントである。生まれたときから世の中に存在し、便利なものとしてしか認識していなかったあのコンセントがよもや死とむすびつこうとは。
その日の晩はあたまからふとんをかぶって震えながら眠りにおちたように思う。
そんなトラウマを抱えたまま、大学生になった私はバイトで大型コンピュータの設置工事をはじめた。大型のラインプリンタやディスク装置のケーブルを外し、位置を変えて再配線するような仕事だった。
その日もディスク装置の三相電源ケーブルを外すところだった。プラスドライバーをあてた瞬間、バチッと音がして右ひじまでしびれ、見るとドライバーが溶けていた。
そして思ったのである。
200Vくらいじゃそうそう死にはしないのだ。家庭用コンセントならなおさらだ。
そうして私はコンセント恐怖症を克服したのだった。性的な意味で。