おれたちはいつも少女の手を離れた風船が点になって見えなくなるまで、ずっとずっと空を眺めてた。

遊園地に行くとたいてい風船が空を飛んでいる。まだ飛んで間もない、屋根ぐらいの高さの風船ならばその軌跡を逆に辿ればなみだ目の少女がいたりする。お父さん。もう一個買ってあげてください。
暫くすると風船は点になる。もう見えるか見えないかわからなくなるそのときまでおれたちは風船を見続け、完全にわからなくなるとあの風船はどこに行ったのだろうと考える。
ふと気付いたのだが、恐らく空の高みには風船の墓場があるのではないか? 紅の豚で飛行機の墓場があっただろう? あれと同じ。いろとりどりの風船が一列の線になって遠くまで続いている風船の墓場。
もしそうだとして。少年少女たちが風船を手放しつづけると、いつか風船たちは空を覆いつくすのではないか? 日の光はさえぎられ、世界は闇に閉ざされる。氷河紀が訪れ、人類は滅ぶ。恐ろしいことに。
ですからお父さん、お母さん。風船を買ったら、子供達の手首にしっかりと結びつけてあげてください。風船が空に飛び去らないように。風船が世界を滅ぼさないように。おねがいです。僕の地球を守って。