第二回萌理賞 非応募作品「おれが世界に属性を望み、彼女は世界を属性で満たした」。というかおれは加筆芸がやりたかったんだと思う

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昨日のエントリに加筆修正を加えてみた。第二回萌理賞 非応募作品「おれが世界に属性を望み、彼女は世界を属性で満たした」。


* * *


「お、おにいちゃんどうして? どうして好きって言ってくれないの?!
「おにいちゃんがこういうの好きだって言うから、姉属性属性も幼馴染属性もみんなみんなこのカラダに融合したのに! どぅうぉしいいてぇええええ"え"ぁ"ぉ"!!!」


ありとあらゆる属性を取り込み彼女の体はぶくぶくとふくれあがった。
直りかけの肌のようにテラテラと光る巨大な肉塊。
もと彼女だったそれは、この街のすべてを取り込み、その末端を空に海に広げ続けながら最後におれを飲み込んだ。
おれの心に彼女の痛みと苦しみが流れ込んでくる。
くっ、彼女はこんなにも苦しんでいたんだ…なのに…おれは…
彼女に出会ってからの思い出が脳裏をよぎる。最後に笑顔を見たのはいつだ?
ごめん。
ごめんな。こんなになるまでおまえを苦しめちまった。
おれは…


次の瞬間、“彼女”がおれに気づいた。流れ込んでくる苦しみは消え、あたりをやわらかな光が包む。気がつくとおれたちは波打ち際にいた。おれの腕の中で彼女が微笑む。


おれが世界に属性を望み、それに応えようとして彼女は世界を属性で満たした。
すべての属性を内包するこの世界は、属性の消えた世界と同値だ。
彼女はもはや姉でもでも幼馴染でもなかった。
すべての属性を持たずにただただ彼女だった。


やっとわかった。


おれは姉でもでも幼馴染でもなく、ただ彼女が好きなんだ。


「やっと、好きって言ってもらえた」
「…言ってないよ」
「じゃあ言ってないってことにしといたげる」
永遠に打ち寄せる波が二人の足元を洗った。


* * *

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

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加筆修正芸をやってみたかった。カーヴァーの「ささやかだけれど、役にたつこと」a small good thing が当初救いのないオチから「癒し」部分を加筆され評価されたという経緯芸をやってみたかったわけです。バッドエンドな第一印象与えておいてから、別エンドを用意して楽しんでいただくっていう、加筆芸。
628文字だから萌理賞には応募しない。おれの文章には無駄が多すぎです。