おれたちはいつだって後れ毛で彼女と出会いたかった。

ちょうむかし、おれが後輩の美少女とくだらない話(シェーキーズの食べ放題でなんとか食いつないでいますとかそうゆう)してるとき、モテ系センパイが脇からついっとやってきて「ねぇねぇ何聴いてんの?」言いながら彼女の両耳あたり、サイドの後れ毛をひっぱった。
「痛っ! 何するんですセンパイ?」
「え? あ、あれ? ヘッドホンじゃなかったのか? ゴメンゴメン」
「もうー。センパイ、ヒドイなー」
そのときの彼女の目がぜんぜん怒ってなかったのと、ヒドイなーの語尾にハートマークついてるのが見えたので、ああこれはダメだなーと悟った。約1週間後、彼女とセンパイが手をつないで歩いてて、ちっくしょうおれもいつかあの手つかって美少女つかまえてやる、後れ毛ひっぱって出会いのキッカケにしてやると決意してから、いくとしつき。いまどきサイドの後れ毛ピローンな美少女なんざめった見ないし、そもそも時代が後れ毛とケーブルの間違いを許さない。だってヘッドホンのケーブル白ばっかりだもんよ。