はてなダイアラージャンプ漫画百選「GUN BLAZE WEST」和月伸宏

最初にはっきり言っておく。GUN BLAZE WESTは万人が面白いと思えるような作品ではない。当時の評判もイマイチ、作者自身も失敗作と認めているフシがあり、なおかつおれ自身無条件で面白いと言える作品でもない。でも。なぜか、この百選企画で取り上げられて欲しいという気持ちが沸いて出た。誰かに取り上げて欲しい作品の一つだから、じゃあ、おれが取り上げようと。そんなことを思った作品。

Gun blaze west 第1巻 (ジャンプコミックス)

Gun blaze west 第1巻 (ジャンプコミックス)

Gun blaze west 第2巻 (ジャンプコミックス)

Gun blaze west 第2巻 (ジャンプコミックス)

Gun blaze west 第3巻 (ジャンプコミックス)

Gun blaze west 第3巻 (ジャンプコミックス)


舞台は西部時代(?)のアメリカ。「強さ」に憧れ、そしてどこまでも「まっすぐ」な少年ビューがアメリカ西部のどこかにあるという伝説の地「GUN BLAZE WEST」を目指して旅に出る。初回の「負け犬(アンダードッグ)マーカス」と主人公ビューの出会い、マーカスの死、修行をして5年後旅立つという点、そして謎に包まれたGUN BLAZE WESTを目指して旅立つという設定は、ルフィとシャンクスの出会い、ひとつながりの秘宝ワンピースを求め航海に出るという漫画ワンピースの構造とまったく一緒。GUN BLAZE WESTご存知ない方にはこの説明が一番わかりやすい。
つまりストーリー的にはどこかで見た感がぬぐえない「GUN BLAZE WEST」。じゃあ、他の漫画に対するこの作品のアドバンテージはいったい何だったか?
台詞のかけあいは銀魂に遠く及ばず、構図の大胆さはアイシールド21にかなわない。アクションシーンは単調でHUNTER×HUNTERのようにアクション導線に説得力のある「絵」として完成しておらず、泣かしの技術もワンピースに負ける。探しに探してやっと出てくるのは、和月伸宏は既存のアイテムに変なアイディアをぶち込んで絵にするのが上手、そしてカッコイイ技名や言い回し、ルビをつけるのが上手、というところだろうか?
仮にそれを和月節と呼ぶならば、その“調子”はこの作品でも如何なく発揮されている。武器を仕込んだメキシカンハット、カウボーイブーツのスパー(ギザギザの拍車)をローラーブレード代わりに突進するオモシロキャラ、1880年とゆう前時代に開発済みだった“米軍初の”マシンナーズ・プラトゥーン、ロケットで突き抜ける甲冑男爵(アーマーバロン)。既存のアイテムをほんのちょっとだけズラしてバカバカしいながらもカッコいいギミックを生み出す和月伸宏のシゴト。
そして言い回し。ロープ使い*1が敵にロープ巻きつけて「テンドリル!」と叫べば、それがただの「巻きツル」を現す言葉だとしてもなんとなくカッコいいし、主人公が敵の胸に銃をつきつけ「ジャックポット!」と叫べばやっぱりこれもカッコいい。意味は分からなくてもなんとなくカッコイイ言葉とゆうのが、小ニ脳のおれのハートをガンガン鳴らし続ける。多分和月伸宏も小二脳の持ち主なのかもしれない。小二が描き小二が楽しむ。清く正しく美しい小二男子向け漫画、少年漫画の王道作品に育ちうる「可能性」に満ち溢れた作品。それが「GUN BLAZE WEST」だった。
“だった”?
そう“だった”だ。この作品は明らかに消化不良のまま28週(全三巻)という微妙な打ち切られ方で終わった。当時の和月伸宏の状態などジャンプ購読中は知る由もなかったが、単行本のキャラ紹介やあとがきにはそこかしこに負け犬(アンダードッグ)和月伸宏の泣き言が書いてあって、情けないとゆうか、いやむしろこの作品は作者である和月伸宏にすら愛されていなかったのだろうかと悲しくなる。そんな精神状態で描かれた作品が長く連載されることもなかったのは、ある種必然だったのかもしれない。
「可能性」。作者にも見捨てられたのかもしれないこの作品のキャラ、アイディア、ギミックの「可能性」がもったいなくて。もしかしたらワンピやナルトと肩を並べる作品になったかもしれないその「可能性」が不憫で。そんなキモチが、おれをして「GUN BLAZE WEST」をジャンプ百選に取り上げたいと思わせたのかも。なんとなく、そんなふうに思う。
* * *
和月伸宏が負け犬(アンダードッグ)状態に陥ったのを、例えばジャンプシステムのせいにする、なんていうのもいいのかもしれない。もしかしたらそれが事実かもしれないのだし。でもそう言ってしまうのは同条件下で戦うすべてのジャンプ漫画家たちに失礼な気もする。
ジャンプシステムの中核をなすと言われている「専属契約制度*2」と「アンケート至上主義*3」。ハンタの念能力開発風に言えば「誓約と制約」・・・か?その厳しい「誓約と制約」という条件の中で、よりキラメキをもって浮かび上がる漫画はホントウに実力を持っていると言ってもよいと思うし、同じように10週で消えていく漫画もあっていい。おれたちはそれらの作品の生死に立会って、長く短いときを共有し、僅かにでもキラメキを放った、「可能性」の光を残していった漫画たちを忘れないでやれば、それでいいのだと思う。
これが理由なのだと思う。単行本でなく毎週月曜日を楽しみに待ち、コンビニで、本屋で、キオスクで、タバコ屋でジャンプを手にとる理由はこれなのだと思う。「GUN BLAZE WEST」はおれの心に一瞬の「可能性」を見せびらかしてとっとと退場してしまった。単行本派をやってたら多分一生手にとらなかった漫画だと思う。そう考えると、いまでも毎週のジャンプを買い続ける動機の一つとしておれの心にフックした「GUN BLAZE WEST」は、ジャンプ百選に名を連ねて欲しい作品の一つであることだけは間違いないのです。おススメはしかねるけれども。ホントウにおススメはしかねるけれども。

*1:ワンピのパウリーやSBRのティムみたいな

*2:○○先生の作品が読めるのはジャンプだけ!

*3:新連載6週目には10週打ち切りが決定することもある、とか