シリーズおれとプリキュア 増毛系ヒロインの死

プリキュア5に限らずだけれども、変身すると増毛するヒロインてのはようは命を削っているのだろう。増毛というのは、つまるところ急激な新陳代謝によって全身の肉体強化をしていることの、シンボル表現なわけである。10分もつはずのろうそくを、1分で燃やし尽くすことで強力な火力を得ている、その明示的表現としての増毛なのだ。
戦闘後、変身がとけた夢原らの足元には大量の抜け毛が残る。五色の髪の毛の山。
「ルージュはいいよね、その程度の抜けならあと50回は変身できるんじゃない?」
「ミントはしっぽがヤバイわ。あと10回でたぶんそこだけ生えてこない」
「ドリーム、レモネード、アクアはどっこいどっこいか」
「10回も変身したら、わたしたちの命も燃え尽きるのかしらね」
そしていつしか彼女らの毛根はその能力を使い果たす。代謝能力は限界を超え、肌には深いしわが刻まれる。もはや肉体を強制加速させることはできない。もうプリキュアになることはできないのだ。
夢原は禿げ上がった頭頂部をつるりとなで上げながら、思うだろう。
私はもうメタモルフォーゼできない体に変わってしまった。プリキュアに《成れない》夢原のぞみに《成ってしまった》。このことこそが最期のメタモルフォーゼなんだわ。でも悲しくなんかないよ。だって、私は常人の何百倍もの密度で人生を駆け抜けることができたんだもの。

シリーズおれとプリキュア コミュニティ呼称問題

プリキュアに感じる違和感は、コミュニティ構成員が変わらないのにメタモルフォーゼ前と後とで呼称が変わる点なのだと思う。
現実世界で、とあるAさんの呼称が家ではお父さん、会社では課長、休日の少年野球では監督、などなどコミュニティにあわせて呼称が変わるというのはザラなわけだけれど、プリキュアの5人はコミュニティ不変のままで「のぞみ」と「ドリーム」を使い分ける。
「呼称」というのは、とりわけ戦闘を主体としたプリキュア活動において、反応速度に直結する重大な要素だ。「あぶない! ルージュ!」と呼ばれて自分が呼ばれていると気付かなければ確実に命を落とす。にも関わらず、呼称を使い分ける。
なぜだ? なぜ使い分けるんだ? いったいどんな目的・メリットがあるのだろうかなどなど考えに考えをかさねてもぜんぜん答えが出ないまま、おれは待ち合わせ場所に到着する。
5分後、集合したいつもの5人(サトウ、タナカ、ヨシモト、ヤマグチ、おれ)でいつもの場所に移動し着替え終えたところで、おれはサトウならぬアクアに声をかけた。
「アクア! アクアストリームよ!」
「わかったわ! ドリーム!」
あっ。