未読の小説の内容を想像してみた。

新宿上空に現れた人影。
桃色の長い髪。
白と黒を基調にしたドレス。
その姿は可憐な少女のものであったが、明らかにサイズがおかしい。彼女の膝頭の位置が都庁の高さと同じくらいなのだ。
そう。
巨人だった。
人々が逃げ惑う。
少女の姿をした巨人はきょろきょろとあたりを見回した後、急に口をすぼめた。
ぶあっっっ。
新宿の周囲にありえないほどの強風が巻き起こる。
待ち行く人々が宙を舞う。
あちこちからあがる悲鳴はやがて一箇所にあつまり、ぱたととぎれた。
人々の悲鳴の終着点は、ぽっかりと開いた巨大な穴。彼女の口だった。
数万の人間を口に含み、もごもごと咀嚼する。
彼女はうっとりとした表情をたたえたまま、また別のほうを向いて人間たちを吸い上げ続けた。
1ヵ月後。
地球上のすべての都市をまわった彼女の身長はいまや成層圏にも届かんとしていた。
地球の昼側の半球に立つ彼女は、ゆっくりと周囲を見回し満足げに口を開く。
「人類は吸いたおしました」
ロミオと名乗るその少女はポケットから出したハンカチで口元をぬぐうと、この宇宙をあとにした。












人類は衰退しました (ガガガ文庫)

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