あの頃のおれたちはいつもちんこを握ってドッグファイトしてた。
中学になりたてのあの頃。ちんこがそれなりに育ち、手で握れるくらいになったおれたちは誰に習うでもなくちんこドッグファイトをしていたように思う。
マクロスなりトップガンなりの、その時代時代の戦闘機モノ作品があり、それにあこがれたおれたちは操縦桿のかわりにちんこを握ったのだ。
ちんこさえ握れば、ちんこを握りさえすれば、フォッカー大佐やトムクルーズになりきれるのだった。
あの頃はちんこを握って大空を舞う、ただそれだけで楽しかった。3時の方向からミサイルが尾を引いて迫り来る。旋回、宙返り。バックをとった。ロックオン。親指でトリガーカバーを弾き、ミサイル発射ボタンを押す。撃墜。また、ノーズの星を描き足さなきゃな。なんて……。
それがどうだ? いつからだろう? ちんこを握っても興奮しなくなったのは。大空を飛べなくなったのは。
多分、何かの作品を見てからだと思う。
救出したヒロインをコックピットに乗せ、敵地から脱出する。エンジンの出力が上がらない。このままじゃ城壁に激突しちまう。渾身の力を込めて操縦桿を引く「イッけぇー!!」 と、そのときヒロインが身を寄せ手をのばし、一緒に操縦桿を引きしぼる。間一髪で城壁を越え、地平線に飛び去る二人。
……そうか。
だからか。
ただ空を飛べば楽しかったのは最初の最初だけだったんだ。今は一緒に飛んでくれる人を《望んでしまっている》んだ。
ダメだな。多分今夜もおれは空を飛べない気がする。昨夜と同じく。