世界5mメタボール仮説

この世界の物質部分は自分から半径5mだけ
世界半径5m仮説 http://d.hatena.ne.jp/hasenka/20070728/p5

「確かに各人の5m球内しか世界は存在しない。理由は簡単。宇宙すべてをモデリングする能力が神にないから。神が無能だから」
「なるほど。でも神が無能ならなぜ人をたくさん存在させるの? 世界には私だけが存在し、私の5m球のみシミュレートすればいいじゃない。私以外、すべて幻でいい」
「それでもいいけど、実態がそうじゃないだけだよ。世界は人の数だけ5m球がある。事実として」
「納得できないけど……まあいいわ」
メタボール半径が5mというのはあくまで平均値だ。ミーム力の強い人間ほど半径は大きくなる。それは単に神がそのようにパラメータを振っているから」
「影響力の強い人間ほどモデルサイズが大きいってとこかしら?」
「そうだね。そしてメタボールの融合度もまた人間個体に左右される。コミュニケーション能力の多寡がメタボール融合度の多寡と対応する。そしてその融合度設定は人間個体の都合ではなく、神の都合だ」

「あなたが非コミュなのは神のせいということ? でもなぜ?」
「神はメタボール融合の輪郭をただ愛でるのさ。メタボールモデルの形が神にとって美しければ彼にとって価値があるというだけ。人間の都合はお構いなし」
「その考え、あなたの僻みがはいってない?」
「人と人とが接触するとき」
「(スルーしやがった!)」
「人と人とが接触するとき、5m球の境界面を神は演算しなおす。まさしくメタボール演算をする。二人の世界のつじつまをあわせようとする」
「(スルーするんじゃねえよ)」
「その演算も当然丸めが入っているがゆえに、人と人とは見ているものが違ってくる。『ひととひととは決してわかりあえない』という問題だよ」
「(おまえの態度のほうが問題だよ)」
「まさに今のきみとおれのように」
「(……はいはい。うまいこといったうまいこといった)」
「以上の状況から、おれはある仮説をたてた。多数の5m球を接触させれば、神の演算能力が破綻をきたすのではないか。神の無能をあばけるんじゃないか」
「……」
「200万。おれの試算では200万人が手をつないだおおきなメタボールのリングを作れば神の力を試せると思う。200万のポンデリングだな


数年後、世界はおれの呼びかけに応じ200万人のメタボール作戦が実行された。



メタボール作戦開始直後、おれは周囲の空気がねっとりとした粘性をもつ流体に変質したかのように感じた。手をつないだとなりの女性の声が届かなくなる。時間の進みが遅くなった空間で、自分だけがその何倍もの速度で思考できてるかのような感覚。予想通りだ。神のシステムが高負荷状態になったんだ。各人の5m球を演算できてない。きっと世界はほころび始める。
そう思った瞬間、すべては消えた。神がリブートしたのである。


もし人間外部に視点を設定するならば、この現象を《バベル》と呼ぶだろう。もちろんリブートされた人間たちがそれを知ることはないので、人間は再び同じことを繰り返す。何度でも《バベル》はおきるのである。*1

*1:メタボール画像はdigiMETA試用版で作成しました。 http://www.studio-pon.com/jp/products/digimeta/index.html