あれはモテではなく、ただの人畜無害認定だった。

あのころのおれはモテていたというよりも、ただ人畜無害認定されていただけだった。


その後輩女子はたいそうかわいかった。たいそうかわいいということは、もちろんたいそうかわいいということであり、グラディウスのオプションみたいに男子を引き連れて学内を闊歩していた。
そしておれはただ彼女の先輩というだけの立場だった。
彼女にとって幸か不幸かおれは先輩であり、それゆえ彼女はおれに無関心を行使できなかった。かわいいこにはすきときらいで普通はない。
そして彼女はすきをえらんだ。
表面上。
彼女は他の先輩にはしないことをおれにだけした。道のど真ん中で抱きついてきたのだった。おれもまるで彼女を受け入れるかのように両手ひろげたりなんかして、でもそんなのその場の思いつきでやっただけで内心ドッキドキだった。
顔では平静保って彼女と同行してた男子と他愛のない会話をしたりした。彼女を胸元にぶらさげたまま。
おれは裏読みした。
彼女はこれをおれ以外にはやらない。それはおれが彼女にとって無害だからだ。人畜無害なおれに抱きつくことは彼女にとってパフォーマンスなんだ。彼女のフレンドリーさを知らしめるための踏み台なんだ。
そう考えたおれは彼女の両肩をそっと引き離す……べきだった。
でもしなかった。
できなかった。
それは、彼女のおっぱいがおなかに当たっていたからだった。おっぱいのことしか考えてなかった。モテとかどうでもよかった。人畜無害認定もどうでもよくなっていた。ただ圧倒的に世界がおっぱいだった。宇宙がおっぱいだった。


そしてそんなおれを軽蔑するかのように、二人の足元をヴァギナが低空飛行していた……で終わったりすると話としてはキレイにまとまるんだけれども、現実にはそんな都合のいいことは起きなかった。
その後も彼女は何度かおれに抱きつき、そしてそれもいつしかなくなりおれは学校を卒業した。先輩属性を失ったおれに、彼女は遠慮なく無関心を行使できるのだった。