彼女はただ「捨て場に困った」とだけ言った

最初の供述で、彼女はただ「捨て場に困った」とだけ言った。
警察では彼の切断された四肢を見つけ出したが、まだいくつかの部分が見つからないままだった。彼女を問いただしても、知らない、他には捨ててない、と繰り返すのみだった。
「マンションでは大きな袋でゴミ出ししてはいけないんです。小さくする必要がありました」
猟奇的とよぶには、あまりにも常識的な彼女。ただ、捨てた四肢について言及するときだけは、冷たい目をして吐き捨てるように「ゴミ」と言った。
「本当の彼にもどってほしかっただけなんです」
連日の事情聴取につかれきった彼女は、窓の外を見つめたままポツリポツリと話し始めた。
「私に暴力を振るうこともなく、ただ優しい声をかけてくれていたあのころに。
「私を殴る腕も、踏みにじる足も本当の彼のものじゃない。彼にとっていらないものなんです。ゴミなんです」
「だから捨てた?」
「そうです。だってそうでしょう?! ゴミだもの! いらないものだもの! ゴミは捨てなくちゃ! いらない部分は捨てなくちゃ!」
完全にわれを失った彼女は、シャツのボタンをひきちぎり胸元をあらわにした。無数の蚯蚓腫れと青あざに混じって、ちいさな異物がひとつ。
「いまじゃほら。こんなにおとなしくなった。出会った頃と同じ、私のそばで何も言わずにただ愛してくれるあの人に」
親指ほどの大きさの人面瘡が、刑事を見てニヤリとした。