銭湯の洗い場でおしっこする少年を見た。

先日久方ぶりに銭湯に行ったところ、お子さんが洗い場でおしっこをしていた。お父さんが申し訳なさそうに、そして周囲のおっさんがいやそうにしていたのがよくある風景といえばよくある風景だったのだが、当の本人はいたって平静だった。間違ったことはしていないという確信に満ちた顔だった。
なんとなくだが彼の考えがわかった。彼は思っただろう。脱衣場では漏らすべきではないし、ましてやお風呂のなかでごまかすのもありえない。前者はお風呂屋さんに迷惑だし、後者はモノゴトをうやむやにしてしまうオトナのやり口だ。事件は発覚しないが湯船につかるすべての人間をうらぎることになる。そんなことはしたくない。ただおしっこはしたい。
おしっこ欲を満たすこととおしっこ被害を最小限に食い止めるため、かれは状況判断した。そのギリギリの折衝の結果として、彼は洗い場でおしっこすることを決意し、実行にうつしたのだった。
周囲のオトナみんなが彼を非難しようとも、おれは彼を非難しない。むしろ尊敬する。将来はその判断力をもってして、有能なプロジェクトマネージャーになるだろう。
すがすがしい気分を味わいながら、風呂をあがると彼がいた。おしっこによって失った水分を補給している。メグミルクフルーツ牛乳。うむ。いい選択眼だ。