「だんご」「粘土」「しかばね」などという串順を、おれは認めないっ

だんご3兄弟の真ん中は粘土で一番下はしかばねです.」
http://d.hatena.ne.jp/OjohmbonX/20061228#p1

関連作品:http://throw.g.hatena.ne.jp/sasuke8/20061229/p1



「この串を見ろ」
先生は一本の串をおれに手渡した。白、茶色、黒の丸い物体が一つの串に刺さっている。この世界における《生命》を表す串曼荼羅と呼ばれるものに似ているが、一点おおきな違いがある。
「真ん中が茶色……粘土ですね? これはおかしい」
「そう、確かにおかしい。だがこれが真実なのだ。今度の学会ではこれを発表しようと思う」
先生の言っていることの意味がわからなかった。串曼荼羅は生命を表す。生命はだんごとして生まれ、しかばねとなり、土に還る。時を経ていつしか土からまただんごが生まれる。この世は繰り返す輪廻の輪なのだ。
だからこそ串曼荼羅はだんご、しかばね、粘土の順で串に刺されるのである。なのにだんご、粘土、しかばねの串順とは! しかも先生はこれが真実などとおっしゃる。
もしそれが本当なら、輪廻の概念が消失する。しかばねからは生命は生まれないからだ。いや概念云々の問題じゃない。生まれ変わりを信じる多くの人間が狂乱するのが目に見える。こんな発表をすれば世界中が大混乱するだろう。
「先生、間違っています! どんな証拠を掴んだか知りませんが、串曼荼羅はだんご、しかばね、粘土の順番でなければならない! 目をさましてください!」
おれは先生の肩に手をかけ、その体をおおきくゆすりながら嘆願した。
「しかしなぁ……」
そうつぶやく先生がおれにつかまれた肩に目をおとす。先生の肩はおれの手の下でぐにゃりとひしゃげ、指のあいだからは茶色い粘土がはみ出していた。