小六のおれとグンゼとカルバン・クライン

おれが小六のころ、男子には二種類いた。グンゼとカルバン・クラインだ。グンゼならお母さんに頭が上がらない子だし、カルバン・クラインなら流行に流されやすい子だった。全員がどちらかだった。
体育前の着替えではカルバン・クラインはそれなりに堂々としていたし、グンゼならすこし恥ずかしがっていた。いじめっ子のタカハシもこのときだけは小さくなっていたし、ヒョロいワダはいつもより目が輝いていた。
ただソウマだけはちょっと違った。グンゼを恥ずかしがらずにむしろグンゼを生かしていたと言える。チンコを股にはさみ、グンゼの両端をぐいとひきあげTバック状態にして「ハイレグー」なんてやっていたのだ。学年で一番の美少女の名前を口にしながらくねくね歩いていた。「ユミコー!」「わははは」みんなで笑っていた。
ある日、女子代表のスズキが仲間数人と一緒にソウマを取り囲んでいた。
「あたしらが何も知らないとでも思ってんの!」
「なんのことだよ!」
「体育の前にふざけたことしてるでしょ! ユミコのこと泣かしてんじゃないわよ!」
「てめーには関係ねーだろ?」
小六の常として、争いは男子女子という構図に拡大した。休み時間は直接口論し、授業中はメモが回った。そしてこれまた小六の問題解決の常として、先生が介入し、5時間目のあとに臨時で学級会が開かれた。
そのときのやりとりはあまり覚えていないのだけど、当然のごとく男子が敗北した。連帯責任ということで、若い女性教師は男子全員を廊下に立たせた。ズボンを脱いだ状態で廊下に立たされたのだった。
廊下にならんだ20以上のグンゼとカルバン・クライン。別のクラスのヤツらがくすくす笑いながら通り過ぎていったが、見られてもどうってことはなかった。誰も反省なんかしていなかった。グンゼもカルバン・クラインも関係なかった。あのとき男子は一つだった。おれたちは一つだった。
ただソウマのグンゼだけはゴムがのびきっていた。