ソニータイム・ブルース -

戦後、大量生産・大量消費時代に突入した日本はいわゆる付喪神を恐れるあまり、あえて「神殺しシステム」を全ての工業製品に組み込んだ。
有給の風邪伝説。- BE PRAYING^3 - - 戦後、大量生産・大量消費時代に突入した日本は

「大戦中、主翼にグレムリンが居ついたときは自分の機械好きを呪ったもんさ」
それが先代の口癖だった。その息子である現会長も似たような物言いをする。
「モノに想いをこめればこめるほど、ヤツラは牙をむく」
マウスを握り締めたまま、会長が口を開く。
「ヤツラって付喪神ですか？」
「ハン！神ぃ？神ってか妖怪のたぐいだな、ありゃ。神なら人間サマに危害加えるなっつの」
会長はそう言うと、3次元CADモニタ上に美しいユニットパターンを描いた。
「それが新型の神殺しですか？」
「神殺し？あぁ政府の連中はそう呼んでるな。おれのオヤジは《ネクローシス》と呼んでたが、そのほうがおれにゃしっくりくるよ。悪意体と接触・捕獲して自滅する機能だ。
「オヤジの頃はハードワイヤーのパターン上に呪術コードを記述してたが多重積層基板でもやってるこた同じだ」
原理は同じでも複雑さには雲泥の差がある。それをこれだけのスピードで設計するなんて、やはりこの人は底が知れない。
「研修ではオフダみたいなものだと習いました」
「そうだな。ただこっちはもうちょっと上等だ。幽素子以外にも対応してる。電子の妖精が生まれる間際の羽音すらかぎわけるのさ」
「神の発生を検知したらシステムごと、ボン、ということですね？」
「まあな」
「しかし会長。この機能、世間じゃソニータイマーなんて揶揄されてますがね。どうにも納得いかないんですよ」
「いいんだよ、どう呼ばれても。お客様の命を守れりゃそれでいい」
「社員の士気にもかかわってます」
「おれからいっとくよ。日本でラッダイトがおきないのはおまえらのおかげなんだ。おまえらは世界を守るシゴトをしてるんだってな」

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